アルミニウム床版
 現在,米国では,非常に多くの橋が大掛かりな補修や耐荷力向上の必要に迫られている.そして,その実施に際して基礎やその他の支持構造を変えることなく,これを解決できないかとの要望があり,これに対処するために,既存のコンクリート床版を,軽量であることを特徴とするアルミニウム床版で取り替える試みがなされている( アルミニウム構造物のサイト参照 ).
 我国においては設計自動車荷重が196kNから245kNに変更され,橋のコンクリート床版や鋼桁の補強が急がれている.また我国においては,兵庫県南部地震後,新たに導入された地震力に対して橋脚補強が求められる場合がある.これらに対して,米国と同様,アルミニウム床版の導入により,床版そのものの重量を減らすことによって対処できないかとの要望が出されている.
 この様な背景で, 道路橋用アルミニウム床版 を開発した.開発されたアルミニウム床版は開閉断面であり,押出形材を摩擦攪拌接合で連結することにより製作した.ここで 摩擦撹拌接合 とは,イギリスの溶接研究所で1991年に考案された固相接合法の一種であり,最新の接合技術である.
 アルミニウム床版に疲労亀裂を発生させる局部応力を調べるために,実際のトラックのタイヤを使って荷重を載荷する装置( タイヤ荷重載荷装置 )を開発し,これを用いて局部応力を調べた結果,局部応力は,タイヤ荷重が大きくなっても,ある値以上にはならないことが明らかになった.
  アルミニウム床版と鋼桁との連結 は,鋼桁の上フランジにスタッドを溶植した後,コンクリートを打設し,その上にアルミニウム床版を被せ,押出形材の内側を無収縮モルタルで充填する構造とした.アルミニウムと鋼は線膨張係数が2倍違うので,アルミニウム床版と鋼桁とが連結されると,温度変化によって,アルミニウム床版に応力が発生する.この応力の大きさを明らかにするために, アルミニウム床版と鋼桁との合成桁 を製作し,その静的載荷試験を実施し,アルミニウム床版と鋼桁との合成作用を明らかにした.
  アルミニウム床版の現場継手 を試作した.現場継手には摩擦接合用鋼製高力ボルトを使用した.アルミニウム材表面の摩擦係数を確保するために,アルミニウム材表面の粗さを制御した継手試験片の引張試験を実施し,アルミニウム材表面の粗さと摩擦係数の関係を明らかにした.アルミニウムはクリープを起こすので,摩擦接合用鋼製高力ボルトは軸力低下を起こす.これを把握するために,現在, 摩擦接合用鋼製高力ボルトの軸力低下試験 を行っている.摩擦接合用鋼製高力ボルトとアルミニウムとの異種金属接触腐食を防ぐために,特殊なコーティングが施された摩擦接合用鋼製高力ボルト( コーティングボルト )を使用した. このコーティングボルトで接合されたアルミニウム継手の腐食挙動を把握するために,現在,大気暴露試験を行っている.
 アルミニウムは180℃を超えるあたりから強度低下が始まる.したがって通常,舗装材料として使用されるグースアスファルトは施工温度が約250℃あるため使用できない.そこで140℃〜160℃で施工できるエポキシアスファルトを採用した.エポキシアスファルトとアルミニウム床版との接着性, ボルト周辺へのエポキシアスファルトの充填性 ,および,エポキシアスファルト施工後のアルミニウムの強度変化を明らかにした.